我が家は借家住まいだ。家を購入するという話がなかったわけではない。ただ、昔の素行があまりにも悪くて、銀行のローン審査で落ちたのだ。企業マニアだった夫が借金まみれになって、私の貯金も内緒で引き出したり、私のカードでキャッシングしたりしていたから、貸してくれる銀行なんてあるはずもない。
でも、私はこの家が嫌いだ。外見こそ可愛らしいけれど、使い難さときたら半端じゃない。キッチンにタオルをかける場所もなければ、トイレにもタオルをかけるハンガーがない。もちろん洗面所にもだ。窓は和室を除いて、すべてが出窓で、雨戸が付いていない。台風の時などかなり怖い。しかも、お隣との距離が近すぎるので、リビングの窓はカーテンを閉め切ったまま開けたことが1度もないときている。
それに、やたらと発生する蟻とナメクジ。家の中に巣があるんじゃないかと思うくらい、蟻が入り込んでくる。蟻が集中している場所は釘などが刺さっていて、少し隙間ができていて、そこから侵入してくるらしい。紙粘土で塞いだら蟻は入ってこなくなったと思ったのもつかの間、今度は外れかけたコンセントカバーの隙間から出入りしているのを発見。また、紙粘土の出番になる。
本当に、この家は、私たちが退去したら取り壊してしまう方がいいのではないかというくらいボロだ。トイレのカギは閉まらないし、凝り過ぎていて、自分では電球が切れても取り換えることができない箇所がいくつもある。いったい、築何年なんだろう。これだけボロで使い難いのに家賃は10万円以上する。この家を気に入っているのは夫だけだ。
自宅兼会社にしているから、そう簡単に引っ越せないのは分かっている。でも、もう私の我慢の限界を超えそうだ。庭は雑草が生えてジャングルみたいだし(庭師さんを頼んで雑草抜きと除草剤撒きをお願いしている)、階段の電気はスイッチを押しても消えない。1階で押しても2階で押しても消えないなんて、配線のどこかでトラブルが起きているとしか思えない。
本当に、死ぬほどボロなのだ。傾いているし、トイレはすぐに詰まるし、借家だから好きなように鋲も打てない。次男坊名義で住宅ローンを組んで、家を買ってもらいたいと思ってしまう。ずっと賃貸でも構わないと思っていたけれど、ここまで使い勝手が悪いとその考えは霧散してしまった。
この家に引っ越してくる前、小さなボロアパートで暮らしていたんだけど、そこは管理会社が大きくて、不具合が出ると夜中でも対応してもらえた。だけど、今の管理会社は週休2日しっかりとるし、9時から17時までしか電話にも出ない。緊急事態が起きたらどうするんだ?って突っ込みたくなるずさんさで、そこも気に入らない点の一つだ。
大家さんの意向で町内会にも入らなくちゃいけなかったけど、町内会の活動に割ける人材がいない。私が自由に動ければいいのかもしれないけど、対人不安のある私には無理がある。子供たちも仕事があるし、夫は論外だ。
湿気がやたら多くて、引き出しが開かなくなったり、落としが開かなかったりする。1階は極寒で、2階は灼熱というくらい温度差があって、1階と2階を行き来するだけで体調を崩しそうだ。マジでやばい。今日はヤクルトの宅配ボックスの蓋に、赤い蜘蛛のような虫がたくさん湧いていた。
資産価値のある家というのが、会社を経営している上では重要らしい。いざという時の担保になるらしいから。でも、住むだけなら、資産価値云々はどうでもいい。
とにかく、私は、このボロ家から逃げ出したい。ここに来る前の引っ越しには乗り気ではなかったけれど、今は率先して引っ越しの提案をしたい気分だ。会社登記してあるから、そうそう簡単に引っ越せないのは分かっているけれど、夫が存命のうちに引っ越したいと思って何が悪い。
新築戸建てに住みたいと思って何が悪いのだ。もう、パイプフィニッシュを使っても流れの悪い風呂にはうんざりだし、いつ、再度、壊れるかわからない水道をびくびくしながら使うのもうんざり。夫は家事をしないから、私の苦労は分からない。
もう、夫名義で住宅ローンは組めないだろうし、社長である次男坊に頑張ってもらうしかない。名ばかり社長ではあるけれど、このまま小説家としての芽が出なかったとしても、今更、就職はできないだろうし、本人も自分は会社勤めには不向きだと夫が死んだあとの心配をしている。通販事業を立ち上げてしまえば問題ないので、夫が元気なうちにそちらを軌道に乗せたい。
賃貸の場合、20年間同じ場所に住み続けたら、それ以上は住めないという決まりがあったはずだ。20年経ったら、会社の登記がどうのとかいう話じゃなく強制的に動くことになるのだから、今、引っ越しを考えてもいいじゃないか。本当に、ここで暮らしているだけでストレスになる。
まあ、だからといって、これ以上、田舎に引っ込むことはしたくないのだが・・・
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