私はお金を使うのが怖い。貯金の残高が減っていくのを見るのが怖い。できるならお金は使いたくないし、もしもの時に備えておいておきたいと思ってしまう。この先、収入がどのくらいになるか分からない家業をやっている以上、危機は必ずやってくる。そんなもしもの時にまとまったお金を出してあげるとか、夫が死んだ後、どうするかしばらく考える時間が必要な時にも、大事なのはお金だ。
お金の苦労が絶えなかったこともあるかもしれない。毎月、必ず、これだけの収入があると保証されている生活をしていたことは、結婚後、ほとんどないのだ。生活費がない、家賃の滞納は当たり前。それでいて、夫は金遣いが荒い。今日食べるものにも困るような中でも、飲みに行かずにはいられない。止めたってキレるだけだから、その辺りはひたすらスルーしたけれど、私の中では、夫のそんな態度は許せないもので、せめて自分だけはお金の使い方に慎重になろうって思ったんだ。
今、家業の方は順調とは言えないまでも、何とかかんとか回っている。それでも、いつ崩壊してしまうか分からない恐怖はある。だから、毎月、お小遣いを渡されても全額使うなんてことは怖くてできないのだ。
大きな買い物をしたい時もある。例えばパソコンとか。でも、そこで貯金を切り崩したら、明日、起きるかもしれない経営危機に何の貢献もできないことにはならないか。ちょっとくらい買っても大丈夫っていう油断が、破滅をもたらすことだってあるのだ。
今の時代、会社勤めしていても、明日、会社があるとは限らないから、サラリーマンの人たちも同じように恐怖を感じていてもおかしくはないと思う。
家で仕事を安定的に経営するのは難しい。うちのような中小企業というか家内工業的な会社では、給料のベースアップもボーナスもなし。それでも、文句を言わずに働いてくれる子供たち。経営が芳しくない時には身銭を切って会社を支えてきた。
次男坊はレアもののグッズを売ったお金を会社に入れたし、私も貯金を入れた。我慢することには慣れているが、お金にはうるさくなった。
他人のお金の使い方に口出しする気はないから、子供たちが給料で何を買おうが何も言うつもりはない。ただ、自分がもらっている僅かなお小遣いは、ほぼ、手つかずで貯金に回す。時々、気が狂ったように散財する時はあるけれど、基本、慎ましく暮らしている。それも、これも、過去の教訓からだ。
夫は給料を家に入れないこともあった。そんな時は督促しても無駄だから、自分が節約しておいたお金で生活をした。その癖が抜けない。そう考えると、夫も随分と変わったのだ。家庭を顧みることなんてなかった人なのに、今は生活のことを気にかけている。これから、自分が残していかなければならない家族の将来を案じているのだろう。
私は夫が引退したいと言っても認める気はないし、引退の話が出る時はだんまりを決め込むのだが、夫が引退して、生活レベルを落とすのは今まで苦労させられてきた身としては理不尽としか言いようがない。自分のやってきたことを真摯に受け止めたら、しんどくても死ぬまで働くしかないって気が付くと思うのだが。
お金、お金、お金。守銭奴だと言われてもいい。今のような生活を続けてきたわけじゃない。借金取りに押しかけられたり、家賃の督促が来たり、その対応はすべて私。たまに、夫が対応して、嫌なことは全部自分にやらせると文句を言われたことがある。自分の借金だろうに。そして、ほとんどの対応を私がしてきたのに、1度や2度の対応で、ふざけたこと言ってるんじゃないと思った。
稼げないなら起業なんて試みるなって真剣に思った。在庫を抱える商売は負債だけが増えるし、今、これだけネットが発達してくれたおかげで今の家業が成り立っている部分は大きい。仕事の関係上、在庫を抱えるようなことはないし、基本、家から出る必要もない。まあ、お金になるから、毎月、出張には出るが。
あくどい商売はしていないが、調子のいい時にはかなりの売り上げになる。それをプールしておけばいいのに、それができない。内部留保もある程度必要だし、得意先を広げることも大事だ。すべてはお金のため。2度と、お金に困るような生活には戻りたくない。その一心で、欲しいものも我慢できるし、贅沢も控えることができる。
夫はもとから浪費家なんだろう。引退させたところで、その贅沢病が治るとは思えない。あっという間に家計を壊すのが目に見えている。だから、死ぬまで現役で働いてもらう。それが、お互いのためにもなると思う。
まあ、休憩することは必要だとは思うが。それ以上は認める気はない。稼がなかったら、不用品だと思われるくらいには好き勝手やってきたわけで、家族にはお金の苦労をかけても当然で、尻拭いさせるのも当然だと思ってきたんだから、罪滅ぼしだと思って私にお金の心配をさせるなって思う。愛より金だ。
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